2026.10.21次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム

自分を知り、宿の「なぜ」を考えた3日間

このたび、じゃらんが主催する「次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム」に参加する機会をいただきました。

半年間にわたるプログラムで、日本各地から旅館・ホテルの経営や運営に携わるメンバーが集まり、ともに学んでいきます。

先日、その最初のプログラムとして3日間の研修に参加してきました。

朝から夕方まで、本当にみっちりの3日間。

講義の内容はもちろんですが、私が楽しみにしていたことの一つが、日本各地で宿泊業に携わる皆さんとの交流でした。

地域も宿の規模も、これまで歩んできた道もそれぞれ違います。

普段、妙高で仕事をしているだけではなかなか出会えない方々と話していると、「そんな考え方もあるんだ」「同じようなことで悩んでいるんだ」と気づくことも多く、とても刺激のある時間になりました。

半年間のプログラムは、まだ始まったばかり。

自分自身の記録も兼ねて、最初の3日間で特に印象に残ったことを書いてみたいと思います。

「何をするか」の前に、「なぜするのか」

1日目のテーマの一つは「リーダーシップ」でした。

その中で、動画2本が紹介されました。

一つは、以前から何度か見たことのある「ゴールデンサークル理論(Why・How・What)」についての動画です。

「何をするのか」ではなく、その前にある「なぜ、それをするのか」。

事業を続けていくうえで、この「Why」が大切だということは分かっているつもりでした。

でも、いざ自分自身の「なぜ?」を言葉にしようとすると、これがなかなか難しい。

なぜMAHORA西野谷を運営しているのか。

なぜ妙高で事業をしているのか。

なぜ台湾と日本をつなぐ仕事を続けたいのか。

自分の中ではなんとなく分かっているつもりでも、それを誰かに伝わる言葉にするとなると、まだうまくまとまりません。

だからこそ、この「Why」は半年間を通して考え続けたいテーマの一つになりました。

「できない」ではなく、まずやってみる

もう一つ、とても心に残ったのが、植松電機・植松努さんのTEDでのスピーチでした。

とても感動し、「これは子どもたちにも見せたい」と真っ先に思いました。

最初から「できない」と決めるのではなく、まずやってみる。

やってみて、失敗してもいい。

失敗したら、「だったら、次はどうしたらいい?」と考える。

私にとっては仕事だけではなく、子育てや日々の生き方についても考えさせられる内容でした。

子どもたちには、「できない」と言うのではなく、「やってみていい。失敗してもいい」と伝えたい。とにかく一歩踏み出すこと。

そして、自分自身もそうありたいと思いました。

小さな組織だからこそ考えたいリーダーシップ

合同会社穀宇もまだ小さな組織です。

大きなホテルのように、何十人、何百人ものスタッフを率いるわけではありません。

そのため最初は、「リーダーシップ」という言葉を聞いても、そこまで自分に関係するテーマなのだろうか、という気持ちも少しありました。でも、研修を受けながら考えていると、リーダーシップは組織の大きさだけの話ではないのだと思うようになりました。

一番身近なところには家庭があります。

そして会社があり、一緒に働く人、協力してくれる人、地域の人、お客様がいます。

結局は、すべて人と人との関わりです。

自分は相手の話をきちんと聞いているのか。

自分の考えを一方的に伝えていないか。

相手が自分の意見を言える関係をつくれているのか。

まずは家庭という小さな単位から。そして自分たちの会社という小さな組織から。

身近な人との関わり方を見直していくことも、リーダーシップの一つなのだと思いました。

40分間、自分自身について話してみる

次に取り組んだのが、「自分自身の棚卸し」です。

ペアになり、お互いにインタビューをしました。

子どもの頃に印象に残っている出来事。

これまでの人生で大きかったこと。

自分はどんな人なのか。

宿を運営してきた中で、最も印象に残っている出来事。

40分と聞いたときは長いように感じましたが、実際に始めてみると、本当にあっという間でした。

自分という一人の人間について、40分で誰かに伝える。

やってみると、思っていた以上に難しいものでした。

質問されることで、「そういえば、そんなこともあったな」と思い出したり、自分ではあまり意識していなかった経験が出てきたりします。

一人で自己分析をするのとは違い、誰かから問いかけてもらうことで、自分自身を別の角度から振り返ることができました。

「伝えたつもり」と「伝わった」は違う

インタビューの後は4人1組になり、自分がインタビューした相手をほかのメンバーに紹介する「他己紹介」を行いました。

これがとても面白いワークでした。

自分が40分間話したことを、相手はどう受け取ったのか。

何を覚えていて、どこをその人らしさとして紹介するのか。

聞いていると、「そこが印象に残ったんだ」と思うこともあれば、自分としては大切だと思って話したことが、思ったほど伝わっていなかったこともありました。

そこで改めて感じたのが、「伝えたつもり」と「伝わった」は違う。ということです。

これは普段の仕事でも同じです。

人に伝えたつもり。

お客様にMAHORAの魅力を伝えたつもり。

ウェブサイトやSNSで発信したつもり。

でも、本当に相手に届いているのか。

「自分が何を話したか」だけではなく、「相手に何が残ったのか」。

自分の話し方や伝え方を振り返る、とても良い機会になりました。

「1年後に達成したいこと」ではなく、「1年後の一日」を描く

自分の過去を棚卸しした後は、未来について考えました。

「1年後、自分はどんな人生を送っていたいのか」。

これまで私は、目標を考えるとき、どちらかというと箇条書きで書くことが多かったと思います。

やりたいこと。

達成したい数字。

行きたい場所。

身につけたいこと。

一つひとつ目標を設定して、それを達成していくという考え方です。

でも今回は、1年後の自分をもっと具体的な文章にしていきました。

朝起きて、どんな一日を過ごしているのか。

どんな仕事をしているのか。

誰と一緒にいるのか。

どんな気持ちで働いているのか。

仕事以外の時間をどう過ごしているのか。

細かく文章にしてみると、「自分が本当に送りたい人生は、こういう一日の積み重ねなのかもしれない」と見えてくるものがありました。

目標を箇条書きにするのとは、また違った感覚です。

この方法は、今後スタッフとの対話にも取り入れてみたいと思っています。

会社から「こうしてください」と目標を渡すだけではなく、一緒に働く人自身が「どんな働き方をしたいのか」「どんな一日を送りたいのか」を考える。

その未来と会社が目指す方向が重なる部分を見つけられたら、働き方についての対話も変わるのではないかと思いました。

子どもたちに、どんな世界を残したいのか

未来について考える中では、自分自身の座右の銘のような言葉についても考えました。

その中で出てきたのが、

「子どもたちに、戦争のない平和な世界を残したい」という思いでした。

私が小さかった頃、戦争は歴史の教科書の中にある、ずっと昔の出来事のように感じていました。

でも最近の世界情勢を見ていると、戦争は決して遠い話ではないと感じます。

世界のどこかで実際に戦争が起き、普通に暮らしていた人たちの日常が突然変わってしまう。

そう考えると、「平和」という言葉の意味も、以前とは違って感じるようになりました。

もちろん、自分一人で世界を変えることはできません。

でも、家庭での人との接し方、会社での関係、地域でのつながり、違う国や文化を持つ人との交流。

身近なところからできることはあるのかもしれません。

台湾と日本をつなぐ活動を続けていることも、私の中ではその延長線上にあります。

最終日|MAHORA西野谷の「コア」は何だろう

最終日は、自分たちの宿について考えました。

テーマの一つが、「宿のコアとなる強み」です。

ここでもペアになり、インタビュー形式で話し合いました。

「MAHORA西野谷の強みは何ですか?」

そう聞かれると、築120年以上の古民家、一日一組、食事、サービスなど、いろいろな答えが考えられます。

でも、話していくうちに、私が最初に思ったのは、

まず、この土地の自然に感謝しなければならない。

ということでした。

私たちがここで何かを始めるずっと前から、自然がありました。

山があり、水があり、雪が降り、田んぼがあります。

そして約120年前、その自然の中に一軒の家が建てられました。

そこで人が暮らし、世代がつながり、今、その家がMAHORA西野谷という宿になっています。

周りには動物がいて、人間がいる。

昔から暮らしている地域の人がいて、そこへ遠くから旅人がやってくる。

考えてみると、MAHORAだけが単独で存在しているわけではありません。

自然があり、家があり、人の暮らしがあり、その延長線上に宿がある。

この順番は、とても大切なのだと思いました。

私たちが「MAHORA西野谷の魅力」と呼んでいるものの多くは、私たち自身がゼロからつくったものではありません。

この土地に昔からある自然。

120年以上受け継がれてきた家。

地域で続いてきた暮らし。

そして、そこにいる人たち。

私たちは、それらを今の時代にお借りしながら、次の旅人につないでいるのだと思います。

宿のコアを「絵」にしてみる

もう一つ、最終日のワークで印象に残ったのが、自分たちの宿のコアを「絵」で表現することでした。

正直、私は絵を描くことがあまり得意ではありません。

最初は「絵で表現するの?」と少し戸惑いました。

でも、実際にやってみると、とても面白いワークでした。

言葉で説明しようとすると、

「古民家」「自然」「地域」「人との交流」

というように、どうしても言葉を並べてしまいます。

でも、それを一枚の絵にしようとすると、

何を真ん中に置くのか。

何と何がつながっているのか。

自分にとって、一番大切なものは何なのか。

自然と考えるようになります。

そして、ほかの参加者の絵を見ることも、とても興味深い体験でした。

同じ「宿のコア」というテーマでも、描き方は一人ひとりまったく違います。

人から考える人。

建物から考える人。

自然や地域から考える人。

同じものについて考えていても、人によって物事を見る「入口」が違う。

それが、絵にすることでとても分かりやすく見えてきました。

これは、先ほどの「伝えたつもりと、伝わったは違う」という気づきにもつながっています。

人によって、理解しやすい入口も違う。

言葉で伝わる人もいれば、写真や絵で伝わる人、実際に体験することで初めて伝わる人もいる。

自分たちの宿の価値をどう伝えていくのかを考えるうえでも、大きなヒントになりました。

「宿の強み」から、「この土地にある価値」へ

今回、MAHORA西野谷のコアについて考えたことで、「宿の強み」という言葉に対する見方も少し変わりました。

「ほかの宿と何が違うのか」

「何を売りにするのか」

もちろん経営では、それを考えることも必要です。

でも、それだけではないように思います。

この土地にすでにあるものを、自分たちはどう受け取るのか。

そして、それをどのように次の人へつないでいくのか。

MAHORA西野谷に泊まっていただくことを入口に、自然に触れ、地域の人と出会い、この土地で続いてきた暮らしや食文化を知る。

そんな宿でありたいという思いも、今回の研修を通して少しずつ言葉になってきました。

答えよりも、問いが増えた3日間

3日間を終えて、何か明確な答えが出たかというと、そうではありません。

むしろ、問いが増えました。

なぜ、この仕事をしているのか。

どんな会社にしたいのか。

どんな人生を送りたいのか。

一緒に働く人たちと、どんな関係をつくりたいのか。

MAHORA西野谷を訪れた人に、何を感じて帰ってもらいたいのか。

そして、自分たちはこの地域に何を残していけるのか。

普段は目の前の仕事に追われ、ここまで立ち止まって考える時間はなかなかありません。

だからこそ、今回の3日間はとても貴重な時間になりました。

半年間のプログラムは、まだ始まったばかりです。

今すぐきれいな答えを出すのではなく、学んだことを合同会社穀宇やMAHORA西野谷の日々の仕事の中で少しずつ試していきたいと思います。

そして半年後、この記事を読み返したときに、

「自分自身も、会社も、少し変わったな」

と思えるような半年間にしたいと思います。

 

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